国宝紹介>平安時代の風物詩、片輪車蒔絵螺鈿手箱

現在、東京国立博物館所蔵の「片輪車蒔絵螺鈿手箱」には、
当時の京都でよく見かけられた光景が描かれています。
賀茂川で牛車の車輪を浸すという風習は、木製の車輪の乾燥を防ぐために
必要不可欠でした。
この手箱にデザインされた片車輪は、川の流れに見え隠れしています。
平安時代から鎌倉時代にかけて流行したデザインで、
人々の趣味が中国風のものから和風に変わってきた時期にあたります。

凝っていることに、箱に付けられている銀製の紐金具も
片車輪の形をしていて統一感があります。
実は、「片輪車蒔絵螺鈿手箱」の文様には、もうひとつ意味があり、
当時の平安貴族の浄土信仰が、表現されています。
いくつもの片車輪に、浄土に咲く蓮の花をイメージさせています。
この「片輪車蒔絵螺鈿手箱」は、何を入れておく箱だったのでしょう?
化粧道具入れと一般にはつたわっているのですが、
径巻を入れておく箱ではないかとの説も有力です。

それは、箱の大きさが、化粧道具入れにしたら小ぶりですし、
蓋のつくりが「被蓋造り」で、身より大きめに造られていたり
するからです。
「片輪車蒔絵螺鈿手箱」は、江戸時代に法隆寺に伝来したのを皮切りに、
全国を転々として、現在の東京国立博物館にたどり着きました。
流転してきたにもかかわらず、保存状態がすばらしいです。
不定期の展示ですが、ホームページなどで、情報を得て
ぜひ実物をご覧ください。

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