国宝紹介>北野天神縁起絵巻承久本は、肝心部分が描かれていない？

「北野天神縁起絵巻承久本」は、悲劇のヒーロー菅原道真を主人公に
しています。
その内容は、道真の生涯、道真の霊が案内する地獄めぐり、
北野社建立の由来からなります。
大画面の絵巻物で、描写にとても迫力があります。

そんな「北野天神縁起絵巻承久本」には、一つ謎とされていることが、
あります。
それは、最後の一巻が未完成であることです。
本来なら、そこに神社の由来と霊験譚が描かれるはずなのですが、
なぜか墨の線だけで表されている白描絵の状態で終わっています。
縁起絵巻としては、とても重要な部分となるところが、
中断していることに謎は深まります。

また一方で、中盤の御所に雷が落ちて多数の死者が、
描かれているところや地獄絵図に見る無残な様子などは、
とてもいきいきと描かれていて、
悲惨な事柄をあっけらかんとユニークに、表現しています。
この「北野天神縁起絵巻承久本」の作者は、菅原道真の無念を描く
ことにあまり力がはいっていないように思われます。
この「北野天神縁起絵巻承久本」は、京都の北野天満宮に
所蔵されています。