国宝紹介>千載一遇のチャンス、楓図

長谷川等伯作の「楓図」は、どんな経緯で描かれたのでしょう？
当時の絵画市場は、狩野永徳の狩野派に独占されていました。
実際、等伯は、この絵の仕事を得る前に、御所に絵を描く大仕事に
割り込もうとしましたが、永徳に阻まれてしまいます。
永徳は、狩野派の仕事をとられないように、知り合いの公家に頼んで、
等伯一派を締め出すよう政治的に裏から手を回したようです。

しかし、それから程なくして、永徳が急逝しました。
それからやっと、等伯にもチャンスが、来ました。
豊臣秀吉から、祥雲寺の障壁画の製作の依頼でした。
祥雲寺は、秀吉の息子鶴松の菩提を弔うために、建立した寺です。
最高権力者からの障壁画の依頼に、等伯は、一門を引き連れ、
それまで培ったさまざまな技法を取り入れ、この絵を完成させました。
秀吉の好みを狩野派の絵から取り入れながら、
狩野派にはない独自の技法も編み出しています。

等伯は、能登の出身。
都に来て一代でのし上がりましたが、秀吉と同じく跡継ぎに恵まれず、
長谷川派は、彼の死後衰えます。
しかし、細々と彼の弟子たちは活躍し、伊達政宗に重用されたりと、
多くの絵を残しています。